白壁の町並みが残る昔の日本と、本州と四国を瀬戸大橋でつなぐ玄関口としての近代都市という二つの顔を持つ倉敷。伝統と新しさが混在するその街にドレミコレクションは在る。
通りに面したショップの大きな窓から、綺麗にレストアされたZ1やゼファーシリーズなどが目に飛び込んでくる。どこかアメリカを感じさせる明るい雰囲気の店内が心地いい。Z好きには堪らない至福の時を過ごしていると、店の奥から元気のいい声が響いた。「いらっしゃい!ちょうど出来上がったところですよ」と満面の笑顔で現れたのは社長の武浩さん。根っからの明るい人だ。
武さんに案内されたのは店の奥にある工場。レストアを待つ旧いZや本物のゴディエ・ジュヌーなどの耐久レーサーが無造作に置かれている様子は、まさにアメリカの田舎町にあるバックヤードガレージ風。表のショップとは対極的なグリースの匂い漂う作業場だ。
「テーマは70年代後半にAMAで活躍したZ1レーサー。まだヨシムラがZ1にウエス・クーリーを乗せて戦っていた時代のイメージで仕上げました」
アンベールされたZ900RSドレミコレクションカスタムは、黒をベースにライムグリーンのストライプで仕上げた渋いカラーリングが印象的。まさに40年の時を飛び越えて過去からやってきた新車のZ1のようなイメージだ。
「ノーマルのZ900RSですが、良く出来ていると思いますよ。このスタイルを再現するためにフレームを一部作り変えていますよね。Z900RSではメインフレームのサイド部分を絞って、シートレールの角度も下げています。これならイケると思いましたね」
ウチはコスプレ屋だから、と笑う武さん。ドレミコレクションは旧Z系など既に欠品となっている外装パーツなどを型から起こした復刻版パーツが有名だ。その中で培った技術やノウハウを生かして、ゼファーシリーズをまんまZ系に変身させる外装キットなどを開発してきた経緯がある。表のショップに展示されているのはまさにその作品で、間近でよく見ないと本物と見分けがつかないほど、そのディテールやバランス感、カラーリングなども忠実に再現されている。なんと、お店に訪れたメーカーの開発者でさえ見事に騙されたという逸話もあるほどだ。
そんな究極のZレプリカビルダーである武さんがその登場を長らく待ち続けていたのが、今回のZ900RSだったわけだ。ただ、そのままではZ1のプロポーションとはだいぶ異なっている。ゼファーに憧れる若い人はすんなり入ってきても、果たしてZ1に憧れを持っていた世代が受け入れてくれるかが疑問だったそうだ。
「Z1は大きい空冷エンジンと細いタンクの組み合わせによるプロポーションに魅力があったんです。対して、Z900RSの水冷エンジンは非常にコンパクトですよね。今風でとても良いのですが、Z1を夢見ていたライダーにとっては少し迫力不足。タンクにボリュームもあるので、エンジンのほうに少し工夫を加えました」
アンダーチューブに見せかけたエンジンガードをわざと外側に張り出しているのは、ボリューム感を持たせて視覚的効果を狙うため。エンジンカバーもわざわざアルミ削り出しのベースを一層作り、その上にZ2タイプポイントカバーを重ね厚みを出している。
外観の要となるのがマフラーだ。特にZ1は左右に振り分けた4本出しマフラーがアイコンになっている。AMAレーサーも実際にその時代にはまだ集合管ではなく4本出しで走っていたのだ。ただ、これもこだわり様が半端ではない。ノーマルマフラーを分解して中身を取り出し、そのパーツを内部に組み込んで新たな4本出しにリビルドしたという何とも面倒な作業をしている。素材をスチール製としたのも当時の柔らかい音質を再現するためだ。
外装にもこだわり、ゼファー用Z2タイプのテールカウルとサイドカバー、スチール製フロントフェンダーを装備。また、Z2タイプのテールランプ、ウインカー、ミラーといういわゆる3種の神器を流用しつつも、灯火類はLEDを内装するなど、見えない部分にも心血を注いでいる。ヘッドライトもZ1のケースを加工したクラシカルなスタイルだが、こちらもやはりLEDユニットに換装している。
ブレーキもAMAタイプのディスク版に前後18インチのモーリスMAGホイールを組み合わせるなど時代感はばっちり。18インチにしたのは見た目のバランスの良さもあるが、Z1にも通じる落ち着いた乗り味も同時に表現したかったという。車体姿勢は若干ヒップアップしているほうが見た目はカッコいいが、足着きが犠牲になるのを嫌って車高調整機能も付けている。女性でも乗れるようにシートを低くできる配慮も。全体のシルエットのバランスをとるために、スイングアームも2cm短く切り詰めた。
これからはコスプレの時代と言い切る武さん。バックステップやマフラーだけでは目立たない。誰から見ても変わったな、と思ってもらえるものでないとカスタムし甲斐がない。かといって、ゴテゴテに高級パーツで飾り立ててもかえって走りにくくなり、本来の良さが台無しになってしまう。であれば、ノーマルの素性の良さを生かしたカスタムであるべき、という考えから特に外装にこだわってマシンを作り上げた。
「今のマシンは走りが良いのは当たり前で、その分スタイリングにこだわってもいいと思うんです。でも、去年にZ900が出てきたとき、往年のZにしびれた僕にとっては正直あまり感動がなかった。」と武さん。ゼファーがヒットしたのは永遠のスタンダードだったから。であれば今回のカスタムも原点回帰をテーマに掲げつつ、初代Z1の走りの資質を受け継いだ70年代風ヘリテージレーサーを目指しては、と考えたのだ。
Z1をはじめ、絶版車となったZたちは世界中で今なお高値で取引されている。「何故って、カッコいいでしょ!」と悪戯っぽい笑みを浮かべる武さん。AMAに殴り込みをかけた初期型Z1や後にWGP王者になったエディ・ローソンが駆ったZ1000J、フランスカワサキの耐久レーサーKRなど、普段見たこともない巨大なモンスターマシンが世界のサーキットで激闘を繰り広げていた70~80年代。当時のバイク雑誌などでそれを見た武さんは、身震いするほどの衝撃を受けたのだとか。日本のネオクラシックを語るとしたらZこそが本質であり、リスペクトを込めてその時代の雰囲気をZ900RSで再現したかったと言う。
「このカスタムZ900RSはまだ途中。やり残したことも多い」と武さん。今後はバイクの“顔”であるタンクにも手を入れて、往年のZ1RやZ1000Mk.Ⅱタイプの角張ったデザインにもトライしてみたいとのこと。新たな水冷Z神話へと夢は広がる。
Doremi Collection
Z2タイプ4本出しマフラー
RK
ゴールドチェーン 525-120L
Doremi Collection
チタン製ウォーターパイプ
Doremi Collection
ダミーフレーム
Doremi Collection
アルミ削り出しトップブリッジ
Hyper Pro
車高調整機能付リヤショック
Doremi Collection
オリジナルアルミ角タイプスイングアーム
Sunstar
フロントブレーキディスク(KRタイプ)
Sunstar
リヤブレーキディスク(KRタイプ)
Doremi Collection
MORRIS MAGホイール 18インチ
Continental
ContiRoadAttack2 CR F:110/80ZR18、R:150/65ZR18
Doremi Collection / K-Factory
スーパーバイクハンドル + アルミ削り出しバーエンド
K-Factory
アルミ削り出しブレーキ&クラッチレバー + レバーガード
Doremi Collection
スペシャル加工シート
K-Factory
アルミ削り出しライディングステップ
Doremi Collection
フォークカバーエンブレム(ブラック)+ KAWASAKIロゴ
Doremi Collection
Z2タイプめっきフェンダー + ステー
K-Factory
フロントアクスルスライダー/エンジンスライダー
Doremi Collection
Z1ヘッドライトケース加工 + LEDバルブ
Doremi Collection
Z2タイプミラー
Doremi Collection
Z2タイプLEDウインカー
Doremi Collection
アルミ削り出しラジエターガード
Doremi Collection
アルミ削り出しポイントカバー
K-Factory
アルミ削り出しフロントスプロケットガード
Doremi Collection
アルミ削り出しエンジンハンガー
Doremi Collection
アルミ削り出しピボットキャップ
Doremi Collection
Z2タイプサイドカバー/テールカウル
Doremi Collection
Z2タイプテールレンズユニット + LEDバルブ
Doremi Collection
Z1タイプチェーンケース
Doremi Collection
Z2タイプリヤフェンダー
Doremi Collection
サイドグリップ
Doremi Collection
車体オリジナルペイント